昭和の時代、喫茶店で飲んだコーヒーは、今よりもずっと甘くて、ずっと濃かった──。 そんな記憶が、ある日ローソンのカフェオレを飲んだ瞬間に記憶の伝言ゲームのように甦ったのです。
あの頃の味は、まるで時代の象徴でした。手間ひまかけてネルドリップで淹れたコーヒーに、ミルクと砂糖をたっぷり。 そんな味が、大人にとっては日常のご褒美であり、子供にとってはレストランや喫茶店に行った時の背伸びでもありました。
イノダコーヒー「アラビアの真珠」との再会
記憶をたどるうちに思い出したのは、京都の名店「イノダコーヒー」。 その看板メニューである「アラビアの真珠」は、まさに“昔ながらの甘くて濃いコーヒー”そのもの。
大人になった今も、あの味に出会うたび、ふっと時間が巻き戻されるような感覚になります。 イノダコーヒーでは、ミルクと砂糖が入った状態で提供され、初めて飲んだときの驚きは今も鮮明です。(現在は違うかもしれません)
洋食屋の思い出と、家族との時間
私の実家は、洋食屋を営んでいました。 カウンター越しに、洋食のコックさんがネルでゆっくりとコーヒーを淹れる姿を思い出します。 香り高いその一杯は、子供にとってはちょっと「がんばり」が必要な飲み物でした。大人の真似そして飲んでも、半分ほどしか飲めなかったな。
お客様も10gのお砂糖やエバミルクの「おかわり」をしていた記憶があります。
今こそ、懐かしさを味わう時間を
日々が忙しく過ぎていく中で、ふと立ち止まり、あの頃の味を思い出す。 それは、自分自身を労わる時間でもあります。
コンビニのカフェオレ一杯から始まる、ささやかな記憶の旅。 昔の味、昔の会話、そして昔の自分。
甘くて濃いコーヒーには、そんな力があるのかもしれません。

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